○野田市開発事業等に係るまちづくり条例
令和5年12月15日
野田市条例第36号
本市は、水とみどり豊かな自然環境の中で、江戸時代から醤油醸造の地として発展し、産業・文化の面においても周辺地域の中心地として繁栄してきた。しかし、近代以降は、鉄道・自動車の発達とともに交通体系は大きく変貌し、東京に比較的近距離に位置しながら、周囲を河川に囲まれた地理的条件に阻まれ、都心部に直結した鉄道や道路がないことから、首都近郊都市でありながら都市化の進展が緩やかで、落ち着いた街並みを形成してきた。
近年は、大規模な宅地開発や土地区画整理事業が各地で進められ、道路、公園などの都市基盤が整備され、質の高い住宅地が形成された一方、開発事業者と地域住民等との間で、工事中の騒音・振動や中高層建築物の建築に伴う日照の阻害等に関する紛争が生じ得ることとなった。
このため、開発事業等を行う際には、機能性や利便性のほかに、地域住民等の良好な生活環境の維持並びに豊かな自然環境及び景観の保全を考慮することが求められている。
また、本市の継続的な発展・成長は、行政のみの力で成し遂げられるものではなく、地域住民等と開発事業者と行政が相互に協力することで初めて可能となるものであり、このことを深く認識し、お互いの共通認識を図り、適切に役割分担しながら、協力関係によるまちづくりを推進する必要がある。
そして、住宅地に近接して物流施設などの大規模建築物が建設されると、日影などにより周辺の良好な生活環境に影響を及ぼすおそれがあることから、このような建設を抑制するなど、地域住民等と開発事業者が相互理解の精神による建設的な話合いに努めることにより、安心して笑顔で暮らせる自然豊かなまち・「~人のつながりがまちを変える~みんなでつくる学びと笑顔あふれるコウノトリも住めるまち」の実現に資するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、本市における開発事業等に係るまちづくりに関する基本理念を定め、市、地域住民等及び開発事業者の責務を明らかにするとともに、開発事業等に係る計画等の公開並びに開発事業等に係る紛争の解決のあっせん及び調停その他必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係の保持を図るとともに、良好な生活環境の維持並びに豊かな自然環境及び景観の保全に影響を及ぼすような開発事業等を抑制することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例における用語の意義は、次項に定めるもののほか、都市計画法(昭和43年法律第100号)、建築基準法(昭和25年法律第201号)及び建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)の例による。
(1) 開発事業 開発区域の面積が5,000平方メートル以上の開発行為をいう。
(2) 大規模建築物 次のいずれかに該当する建築物をいう。
ア 延べ面積が10,000平方メートル以上のもの
イ 共同住宅であって、計画戸数が100戸以上のもの
ウ 建築物の高さが20メートル以上のもの
(3) 特定用途建築物 次のいずれかの用途に供する建築物であって、当該用途に供する部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上のものをいう。
ア ボーリング場、ゴルフ練習場又はバッティング練習場
イ ぱちんこ屋、カラオケボックス又はゲームセンター
ウ 公衆浴場
エ 葬祭場
(4) 住居地域 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域及び第二種住居地域をいう。
(5) 事業者 開発事業を行うことを予定する者又は大規模建築物若しくは特定用途建築物を建築することを予定する建築主をいう。
(6) 近隣区域 開発事業に係る開発区域の区域境界線又は大規模建築物若しくは特定用途建築物の敷地境界線からの水平距離が当該開発事業において建築する建築物又は当該大規模建築物若しくは当該特定用途建築物の高さの2倍の範囲内にある土地の区域をいう。
(7) 地域住民 次のいずれかに該当する者をいう。
ア 近隣区域を含む自治会(一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成される団体をいう。以下同じ。)の区域内に居住する者
イ 近隣区域内の全部又は一部に自治会の区域が存在しない場合にあっては、開発事業に係る開発区域の区域境界線又は大規模建築物若しくは特定用途建築物の敷地境界線から300メートル以内の区域内に土地又は建築物を所有する者及び当該建築物に居住する者をいう。
(8) 近隣関係者 近隣区域内の土地又は建築物を所有する者及び当該土地又は当該建築物を占用する者をいう。
(9) 地域住民等 地域住民及び近隣関係者をいう。
(10) 開発事業者 事業者及び工事施行者をいう。
(適用除外)
第3条 この条例の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
(1) 国、地方公共団体その他規則で定める団体が開発事業又は大規模建築物若しくは特定用途建築物の建築(以下「開発事業等」という。)を行うとき。
(2) 都市計画法第29条第1項第4号から第11号までに掲げる開発行為を行うとき。
(3) 市長が良好な生活環境の維持に支障がないと認める開発事業等を行うとき。
(基本理念)
第4条 開発事業等は、地域住民等、開発事業者及び市の相互の信頼、理解及び協力の下に行わなければならない。
2 住居地域及び住宅が連たんしている住宅地に近接する開発事業等は、地域住民等の良好な生活環境の維持並びに豊かな自然環境及び景観の保全に十分に配慮したものでなければならない。
(市の責務)
第5条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、開発事業等に係る紛争を未然に防止するよう努めるとともに、開発事業等に係る紛争が生じたときは、迅速かつ適正に解決するよう努めるものとする。
(開発事業者及び地域住民等の責務)
第6条 開発事業者は、基本理念にのっとり、開発事業等に係る紛争を未然に防止するため、開発事業等を行うときは、周辺の環境に及ぼす影響に十分配慮するとともに、良好な近隣関係の保持が図られるように努めなければならない。
2 開発事業者は、住居地域及び住宅が連たんしている住宅地に近接する開発事業等を行うに当たっては、基本理念にのっとり、土地利用が地域全体に影響を及ぼすことを自覚し、建築物の高さを周辺環境に配慮した高さにするなど、地域住民等の良好な生活環境が維持されるよう必要な措置を講じなければならない。
3 開発事業者は、地域住民等に対して開発事業等の内容を説明し、理解を得るよう努め、紛争が生じないようにするとともに、万一紛争が生じた場合は、事業者の責任において処理しなければならない。
4 開発事業者及び地域住民等は、開発事業等に係る紛争が生じたときは、相互の立場を尊重し、互譲の精神をもって、自主的に解決するよう努めなければならない。
(構想の届出等)
第7条 事業者は、開発事業等の構想に着手する段階であって、当該構想の変更をすることが可能な時期の間に、当該開発事業等に係る構想(以下「構想」という。)を定め、規則で定める届出書に位置図及び開発構想図を添付して、市長に届け出なければならない。
2 構想には、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1) 事業者の氏名、住所及び連絡先(法人にあっては、その名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地及び連絡先)
(2) 開発事業等の予定地の所在
(3) 開発事業等の目的
(4) 開発事業等の概要
3 市長は、第1項の規定による届出をした事業者に対して、基本理念に照らし、当該構想について助言又は指導を行うことができる。
2 前項の規定により構想公開板を設置した事業者(以下「構想事業者」という。)は、規則で定めるところにより、市長に報告しなければならない。
(構想の周知等)
第9条 構想事業者は、前条第1項の規定により構想公開板を設置した日から起算して7日以内に、地域住民等に対し、規則で定める方法により、当該構想の内容を周知しなければならない。
2 構想事業者は、地域住民等から当該構想の内容について説明を求められたときは、当該構想に関する書類等の写しを用いて当該構想の内容を説明しなければならない。
3 地域住民等は、構想事業者に対し、規則で定めるところにより、当該構想について意見を申し出ることができる。
(構想に関する書類等の縦覧)
第10条 市長は、第7条第1項の規定により届出を受けた書類等を一般の縦覧に供するものとする。
(構想の変更)
第11条 構想事業者は、第7条第1項の規定により届け出た構想を変更したときは、速やかに、規則で定めるところにより、市長に届け出なければならない。
(事業計画の届出等)
第13条 構想事業者は、開発事業等を行おうとするときは、事業計画を定め、規則で定める届出書に位置図その他規則で定める書類等を添付して、市長に届け出なければならない。
2 前項の事業計画には、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1) 事業者の氏名、住所及び連絡先(法人にあっては、その名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地及び連絡先)
(2) 当該事業計画に係る開発事業等の開発区域又は建築敷地(以下「事業区域」という。)内の土地の所在、地番、地目及び面積
(3) 開発事業等の目的
(4) 予定建築物の規模
(5) 工事施工者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地)
(6) 工事施工期間
3 市長は、第1項の規定による届出をした構想事業者に対して、基本理念に照らし、当該事業計画について助言又は指導を行うことができる。
2 前項の規定により計画公開板を設置した構想事業者(以下「計画事業者」という。)は、規則で定めるところにより、市長に報告しなければならない。
(事業計画の周知等)
第15条 計画事業者は、地域住民等から当該事業計画に係る内容について説明を求められたときは、当該事業計画に関する書類等の写しを用いて当該事業計画の内容を説明しなければならない。
2 計画事業者は、地域住民等の理解を得るよう、地域住民等に対して当該事業計画についての説明会を開催しなければならない。
3 計画事業者は、前項の規定による説明会の開催に当たっては、地域住民等が出席しやすいよう、会場及び時間帯に配慮するとともに、規則で定める方法により、当該説明会の開催を周知しなければならない。
5 計画事業者は、第2項の規定による説明会の開催をしたときは、規則で定めるところにより、市長に報告しなければならない。
(事業計画に対する要望の申出等)
第16条 地域住民等は、計画事業者に対し、規則で定めるところにより、事業計画についての要望(周辺の環境に及ぼす影響に関するものに限る。)を申し出ることができる。
3 第1項の規定による要望の申出を受けた計画事業者は、当該申出をした地域住民等に対し、当該要望への対応を書面により回答しなければならない。
(関係書類の縦覧)
第17条 市長は、第13条第1項の規定により届出を受けた書類等を一般の縦覧に供するものとする。
(事業計画の変更)
第18条 計画事業者は、第13条第1項の規定により届け出た事業計画を変更したときは、速やかに、市長に届け出なければならない。
(事業計画の廃止)
第19条 計画事業者は、第13条第1項の規定により届け出た事業計画を廃止したときは、速やかに、市長に届け出なければならない。
2 計画事業者は、前項の規定による届出をしたときは、速やかに、周知対象地域住民等に対し、規則で定める方法により、その旨を周知しなければならない。
(あっせん)
第20条 市長は、地域住民等と開発事業者との間に構想又は事業計画に係る次の各号のいずれかに該当する紛争が生じた場合において、当該紛争に係る地域住民等及び開発事業者(以下「紛争当事者」という。)の双方から当該紛争の調整の申出があったときは、あっせんを行うものとする。
(1) 開発事業等により設置される擁壁が周辺の環境に及ぼす影響に関する地域住民等と開発事業者との間の紛争
(2) 大規模建築物の建築に伴って生じる日照若しくは通風の阻害又はテレビジョン放送の電波の受信障害が周辺の環境に及ぼす影響に関する地域住民等と開発事業者との間の紛争
(3) 開発事業等に係る工事に伴って生じる騒音、振動又はじんあいが周辺の環境に及ぼす影響に関する地域住民等と開発事業者との間の紛争
(4) 前3号に掲げるもののほか、構想又は事業計画に関する紛争であって、当該構想又は事業計画に係る開発事業等が周辺の環境に及ぼす影響に関する地域住民等と開発事業者との間のもののうち、市長が特に解決の必要があると認めるもの
2 前項の規定にかかわらず、市長は、紛争当事者の一方から当該紛争の調整の申出があった場合において、相当な理由があると認めるときは、他の紛争当事者に対し、期限を定めて、あっせんに応じるよう勧告することができる。
5 市長は、あっせんを行うときは、紛争当事者の双方の主張の要点を確かめ、あっせんに係る紛争が公正に解決されるよう努めるものとする。
(工事の着手の延期等の要請)
第21条 市長は、あっせんを行うため必要があると認めるときは、開発事業者に対し、期間を定めて、当該あっせんに係る開発事業等の工事の着手の延期又は工事の停止を要請することができる。
(報告の徴収等)
第22条 市長は、あっせんを行うため必要があると認めるときは、紛争当事者に対し、あっせんに係る紛争の状況に関する報告若しくは資料の提出を求め、又は質問することができる。
(代表当事者の選定)
第23条 市長は、あっせんのため必要があると認めるときは、共同の利益を有する紛争当事者の中からあっせんの手続における代表者となる1人又は数人(次項において「代表当事者」という。)を選定するよう求めることができる。
2 共同の利益を有する紛争当事者は、前項の規定により代表当事者を選定したときは、書面をもって市長に届け出なければならない。
2 市長は、あっせんを打ち切ったときは、紛争当事者に対し、その旨を通知するものとする。
(あっせんの手続の非公開)
第25条 あっせんの手続は、公開しない。
(調停)
第26条 市長は、第24条第1項の規定によるあっせんの打切り後、紛争当事者の双方から当該打切りに係る紛争の調整を調停に付することの申出があった場合において、必要があると認めるときは、調停を行うものとする。
2 市長は、第24条第1項の規定によるあっせんの打切り後、紛争当事者の一方から当該打切りに係る紛争の調整を調停に付することの申出があった場合において、相当な理由があると認めるときは、他の紛争当事者に対し、期限を定めて、調停に応じるよう勧告することができる。
(野田市開発事業等紛争調停委員会の設置)
第28条 第26条第4項の規定による市長の付託に応じ調停を行うとともに、市長の諮問に応じ、開発事業等に係る紛争の予防及び解決に関する重要事項を調査審議するため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき、野田市開発事業等紛争調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置する。
(組織)
第29条 調停委員会は、委員3人以内で組織する。
(委員)
第30条 委員は、法律、都市計画、建築、環境等の分野に優れた学識経験者のうちから市長が委嘱する。
2 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 委員は、再任されることができる。
4 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後においても同様とする。
(会長)
第31条 調停委員会に、会長を置き、委員の互選により選任する。
2 会長は、会務を総理し、調停委員会を代表する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(会議)
第32条 調停委員会の会議は、会長が招集し、議長となる。
2 調停委員会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 会議の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(意見の聴取等)
第33条 調停委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係者に対し、出席を求め、意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
(会議の非公開)
第34条 調停委員会の会議は、公開しない。
(調停案受諾の勧告)
第35条 調停委員会は、必要があると認めるときは、調停案を作成し、紛争当事者に対し、期限を定めて、その受諾を勧告することができる。
(調停の打切り)
第36条 調停委員会は、調停によっては当該調停に係る紛争の解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
(調停の報告)
第37条 調停委員会は、調停を終了したときは、速やかに、当該調停の経過及び結果を市長に報告するものとする。
(開発事業等の手続)
第39条 事業者は、開発事業にあっては都市計画法第29条第1項の規定による開発行為の許可の申請を行う日までに、大規模建築物又は特定用途建築物の建築にあっては建築基準法第6条第1項又は第6条の2第1項の規定による確認の申請を行う日までに、第16条第4項の規定による報告をしなければならない。
(地位の承継)
第40条 この条例に基づく届出等の手続その他の行為をした事業者について相続、合併又は分割(当該行為に係る開発事業等の全部を承継させるものに限る。)があったときは、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該行為に係る開発事業等の全部を承継した法人は、当該事業者のこの条例の規定による地位を承継する。
2 前項の規定により事業者の地位を承継した者は、その承継の日から起算して10日以内に、市長に届け出なければならない。
(勧告)
第41条 市長は、次の各号のいずれかに掲げる行為をしない事業者に対し、期限を定めて当該行為をするよう勧告することができる。
(1) 第7条第1項の規定による届出
(2) 第8条第1項の規定による構想公開板の設置
(3) 第9条第6項の規定による報告
(4) 第13条第1項の規定による届出
(5) 第14条第1項の規定による計画公開板の設置
(6) 第15条第2項の規定による説明会の開催
(7) 第15条第5項の規定による報告
(8) 第16条第4項の規定による報告
(公表)
第42条 市長は、前条の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、次に掲げる事項をインターネットの利用その他適切な方法により公表することができる。
(1) 当該事業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
(2) 当該勧告の内容
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該事業者に対し、その旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(委任)
第43条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の規定は、次に掲げる開発事業等については、適用しない。
(1) この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前に市長との協議を開始した開発行為又は建築物を建築する行為に関する事業計画に係る開発事業等
(2) 施行日前に市長に行った都市計画法第21条の2第1項又は第2項の規定による提案に係る開発事業等